ネット“メディア”は本当に大丈夫?

 ここ数日間自分のニュースサイト*1の更新に精を出している*2のだが、最近『ちょっと引っかかる』記事が続けて出てきたので、今回はここのサイトでエントリー。

ネットメディアは「悪意」の生産場所なのか?

livedoor blogがアゲハント最高!!の存続を許しているのは何故? (闇子3歳)


 前者はガジェット通信 GetNewsが出したドラマ*3の記事についての意見。後者は2chの(ニュース速報系の)まとめサイト管理人の『引用しているスレとレス』に対する意見。
 両者共に「疑問」として指摘している内容は、「どうも記事を書いている記者やまとめサイトの管理人は、それぞれ『悪意』を持って記事を書いたり、または2chのスレに書いてある「名無しさん」のスレを引用してるんじゃないか?」という事である。
 もうちょっと詳しく書くと、前者は2chやネットで流れている『噂』を読んだだけで記事を一本仕上げるのはどうよ」という事と、「検証も取材も一切やらない癖して、それで“記事の間違い”には一切触れないで知らんぷりをかますのは、ネットメディアとして最低なんじゃないんですかい、ガジェット通信さん?という事。
 後者は「最近の2chの(ニュース速報系の)まとめサイトの管理人は、自分の中にある『悪意や差別』をごまかすために住人のスレを『引用』してないか?という事。


 要は「情報を伝える身分の人間が、『悪意を持った印象操作』を堂々とやってどうする!」という事である。もっともネットメディアや2chまとめサイトのその手の『悪意』は前々からいろいろな人が指摘しているし、さらに指摘しているにもかかわらず全然改善される気配がないので、「まあ、これが『ネットの“風習”』なんだろうなあ」と皮肉を込めた感情を抱えているのだが。


 ただ「2chやネットメディアを介さない情報に『悪意』はないのか?」となると、必ずしもそういうわけではなくて……。

ヒウィッヒヒーよ、お前もか!

http://yarukinashi.seesaa.net/article/133558167.html


 上の二つはTwitterで『松村邦洋が死亡した』という「デマ」が流れたときにできた、Twitter住民の“情報の伝達具合”を記事にしたもの。

 まあこれは実際にTwitterでデマを流した本人に対しては「ドアホ」の一言で済むのだが、問題はその後その『デマ』の伝達具合が、あまりにも早いスピードで“拡散してしまった”事である。


 こうなると一つの疑問が浮かぶ。つまり「ネットの情報を“受け取る側”の人間も、実は『悪意』を持って情報を受けているのではないか。もっと言うとネットの情報を“流す側”と“受け取る側”が、それぞれ情報の『悪意』を共有してるのではないか」という事だ。

ネットメディアは“感情に左右される”メディアである


 考えてみればネット世界における「情報の伝わり方」はかなり独特だなあと思っている。その伝わり方を俺なりのイメージで示してみると、だいたいこういう感じだろうか。

 (1)  既存のメディア(またはネットメディアやブログなど)が「(一次)情報」を伝える。
            ↓
 (2-A) それを読んだ2chのニュース系の板に常駐している記者(以下「>>1」)がスレに書き込む「(二次)情報」。*4そしてその記者が書いたスレの中で住民が議論する。
 (2-B) それを読んだはてブ民の一人がブックマークする「(二次)情報」。そしてそのブックマークされた空間の中で、はてブ民が自分の意見を言ったり、または議論したりする。
            ↓
 (3)  それを読んだ2chのまとめブログの管理人や個人ニュースサイトテキストサイトの管理人が、自分のブログやホームページに記事を書き込む「(三次・四次情報)」。以下、まとめサイトの記事を個人ニュースサイトが取り上げたり、個人ニュースサイトから別の個人ニュースサイトへと記事を引用したりの繰り返し。


 さてその「独特な情報の伝わり方」をするネットメディアを見て、俺は同時にこういうことも考えている。つまりネットメディアはニュースを引用して伝える管理人や、それを読む読者の「感情」に正直“すぎる”メディアなのではないのかと。

 まあニュースを引用したり、それを読む読者のネガティブな意味での「これだから“○○”*5は」の一言(と、多少の自分のコメント)だけで済めばそれでいいのだが*6、問題はその感情を“正当化”させるために、記事を「印象操作」してないかという事だ。


 「印象操作」とはちょっと意味が違うかもしれないが、冒頭に出た『闇子3歳』の管理人である闇子さんは、過去にこういう記事を書いている。

http://blog.livedoor.jp/yamiko010/archives/51286535.html

 「お兄ちゃんたちが「ネット世論」と命名しているのはこういうスレの意見でしょっ? ちっさ!!! この一派閥にも満たない意見が「ネット世論」だなんてちゃんちゃらおかしいのー!」


 構図的には「民主党を持ち上げるマスコミ」を敵視するネット世論でしたっけ?


 「はぁ?って感じ。マスコミに対抗できるほど、ネットは巨大ではないよ。っていうか「ネット」という一大勢力なんてありえないの。ネットの意見が一枚岩になることはないよ」


 うーん。まあネットには王もいなけりゃ長もいませんからねえ。アクセスの多いサイトを所持している人間の意見が前にでやすいってだけで…。


 「その通りでございます!(ペコリ) だからネット世論なんてたいそうな名前で、ニュー速と+らへんの自民支持者の意見が出回ってる。でも実体はどう? ニュー速には色んな意見が出てるよね」


 確かに、自民支持者の意見が一大勢力を形成してる気がしますが、ニュー速の総意って感じじゃないですな。他の党を支持する書き込みやら、単純に自民を批判する書き込みもありますね。


 「つまりニュー速は別に「マスコミダメ! マスコミが支持するミンスダメ!」なんて言ってない。だいたいニュー速にはたくさんの人間が書き込むけど、ネットユーザーの全員が書き込んでるわけじゃない。個人サイト管理人全体で言っても、別に自民支持で反マスコミ・反民主とは到底言い切れない」


 でもネット世論とか言いつつ、反マスコミ・反民主として紹介する人が多い気がしますけど?


 「その原因は調査不足としか言いようがないだろ。ぶっちゃけコピペブログしか見てないような奴が「ネット世論」を語っている気がしてならない。言っちゃあ悪いけど、コピペブログの管理人はそれほどリベラルでもないし、アカデミックでもない」


 全員が全員というわけでもないでしょうけどねー いまだに嫌韓とか嫌中の視点からレスを抽出している人がいるのは確かです。


 「コピペブログは確かにニュースサイト的な要素を含む。しかしコピペブログ管理人は記者ではない。真実を報道するのではなく、あくまでネタを提供するエンターティナーに過ぎない


 盛り上がりで行動するのがいい見本ですね。あの党をいきなり一生懸命応援してみたかと思えば、次は新聞社不買運動…。


 「彼らがいかに信念無く、勢いで盛り上がってるだけかはよく分かる。ある程度の時間が経つと、掲げた目標が達成してもいないのにコソコソとやめるからな。それが悪いとまでは言わないが、所詮「祭り」に参加しただけの野次馬だと言えます」


 ネタとしては非常に面白いけども、報道としては最低の質を誇る2ちゃんねるまとめブログを参考にしてはいけないってことですか?


 「ネット世論を考える際に、コピペブログを極大視すべきではない。もっと言えばネットを「マスコミ」とか「政府」のようなコミュニティと同列視すべきではない。ネットは「ウエストファリア条約」が成立する以前のなんでもありな世界にそっくりな感じなの」


 もしくは近代的なゲリラとかテロにも似てるかもしれませんね。


 「そうだね。全員がバラバラで、主義主張に関する派閥なんてほとんど成立してない。敢えてネットのつながりを挙げるならアクセスの流れだけね」


 じゃあネット世論なんて考えは根本的に間違ってますね。マスコミとか政府とは全く異色の集団――いや集団ですらないじゃないですか。


 「ある程度の棲み分けはあるみたいだけどな。2ちゃんねるとかニコニコとかはてなとか発言小町とか… でも村にも劣る拙いつながりしかないコミュニティばかりです」


 (http://blog.livedoor.jp/yamiko010/archives/51286535.htmlより。) ※太字部分は引用者による。


 かなり長い引用になってしまったが、要は今回のネットメディアや2chブログの管理人の「悪意」も似たような問題を抱えている。
 つまり“ネットメディアや2chブログの管理人の「悪意」”が読者に伝わり、さらにその読者が“もっと大きな「悪意」”を抱えて他のブログや「ネットの“外”」に持ち込む。いわゆる「悪意」の連鎖が知らないうちに起きている状態になる。


 正直この状態はネットを“メディア”として見る際、「どうよ?」と思ってしまうのだが。もっと言うとそれが原因でネットメディアの価値が地に堕ちてしまわないか心配になる。本当にネットメディアは大丈夫かね?

ネットメディアが地に堕ちないようにするために我々がするべき心構え

 「現状での日本のネットは娯楽に過ぎない。日本のネットなんて主義主張の無い一部の人間のおもちゃってことをきちんと認めましょうよ。そしたらネットを放棄するか、作り直すかを考えられるようになれるでしょ?」


 (http://blog.livedoor.jp/yamiko010/archives/51286535.htmlより。)

 今のネットメディアの立場を考えればその通りである。ではこれからネットメディアが「発展」するにはどうしたらいいのだろうか。

 前に俺はこの記事で、『「読み手に優しいネットの記事」は疑ってかかる』と書いた。ブログを書いたり2chニコニコ動画などにはまったりすると、どうしてもそれを共有する“身内”に甘くなる。もっと言うとその“身内”の意見を頭ごなしに信用して、本来確認しなきゃならない「事実」を確認し忘れる。世間話として捕らえるならそれでもいいかもしれないが、「“メディア”として発展させたい」のならそういう感情は“毒”なのではないかと思う。

 今日ネットメディアを発展させたいのなら、そういう「ネガティブな感情や“身内”の甘え」は乗り越えないといかんよねえと思う。「中立的な考えを持て」とは言わないが、世間に対してネットやブログで“怒り”をぶつけるのを少し我慢するだけで、その場にある感情や世間の見方がだいぶ違うのは身を持って体感している。

 問題はその「ネガティブな感情や“身内”の甘え」を自覚しているネット住民がどれくらいいるかという事なんだが。

*1:毎週日曜日と木曜日更新、興味があったらぜひ来て下さいませ。

*2:といっても週2日だが。いや、毎日更新するのは体力的に大変でねえ。

*3:TBSで放映されている『JIN 〜仁〜』のこと。最近のTVドラマでは珍しい高視聴率を獲得している。

*4:現状「+」板は完全記者制。

*5:“○○”の中には「チョン」だの「マスゴミ」だの「ミンス」だの、どれを入れてもかまわない。

*6:個人的にはあまりよくないが。正直「これだから“○○”は」ばかりの文章を読まされるのはなんか退屈。なぜなら簡単にその言葉が出てくる分、『この管理人(読者)は、本当は何も考えてないんちゃうんか?』と考えてしまう。書いた本人にとっては決してそうではないのだろうけど。